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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

フィアット 600eは可愛いけれど…走り味が弟分500eと違いすぎる!

公開日: 更新日:

フィアット 600e(車両価格:¥5,850,000/税込み)

 またまた先が読めなくなってきたEVマーケット。中国では伸びる一方、それ以外は不安定で、特に我がニッポンでは恐らく今年台数を落とすはず。

 そんな温度差を如実に感じさせるのが欧州ブランドの新車攻勢だ。商品企画は数年前のEVシフト全盛時代に作られたものなのでしばらくは電動車が続く。その偏重路線が露骨に伺えるのが多国籍ブランドのステランティスで、今年出した新車は硬派アメリカンSUV、ジープ・ラングラーのマイチェンモデルや新型MPVのフィアット・ドブロもあるが近いサイズで2種のコンパクトEVをブランド違いで出してきた。

 1つは9月に発表されたフィアット 600e、もう1つはジープ アベンジャーだ。どちらも全長4mチョイのSUVボディのバッテリーEVで、今回は600eに乗ってみた。

弟分500eを上回るインテリアの充実度

 印象的なのはそのキュートデザイン。さすがのイタリアンブランドっぽさで、既存のコンパクトEV、500eの兄貴分と言ったキャラクター性。半開きのマナコのごときLEDライトもそっくりで、問答無用の可愛さ。ただしサイズはひと回りデカい。

 500eが全長3.6mの5ナンバーサイズで4人乗りとはいえ、正直リアシートは狭いのに対し、600eは全長4.2mとトヨタ ヤリスクロスに近く、全幅も1.78mと手頃。なにより5人乗りでリアシートに普通に成人男性が座れる。

 インテリアも500e同様の丸みを帯びたシンプルインパネがオシャレで、『600』のロゴ入り本革ステアリングもいい。

 シートもホワイト系のエコレザー表皮採用で、『FIAT』の判で押したようなエンボス処理がカッコいいし、水色の刺繍も日本車にはないブランド感。デジタル性能もイマドキで、7インチのデジタルメーターに10.25インチタッチモニターを備え、そのほかに運転席マッサージ機能やハンズフリーパワーリフトゲート、センサー付きキーレスエントリーシステムなども装備。この辺りは弟分を上回る充実度だ。

走り味は500eとはまるで違う

 動力性能的にも十分で、コンパクトボディにも関わらず54kWhの大容量バッテリーを搭載。ピークパワー&トルク156ps&270Nmのほどよい電気モーターにより、発進から静かで滑らか。フル充電からのモード航続距離も493kmと充分だ。

 ただし、走り味とフロア周りの質感は正直物足りない部分もあり、少々プラスティッキーだし、乗り心地も剛性感が足りずブカブカ気味。

 特にブレーキペダルのストロークが長く、カッチリした感触に欠けるのが気になった。他がオシャレなだけに残念。これがこの試乗車だけならよいのだが……。

 聞けば、デザイン的には500eの兄貴分たる600eだが、ボディ骨格は同じステランティス内の元PSAグループが担当したe-CMPのようで、味わいは大きく違う。

 個人的には500eの方がクイックで楽しいが、600eは乗り心地やソフト感重視。ここは好みが分かれるので、気になる方はぜひ試乗して欲しい。同じフィアットブランドとはいえ、ビックリするほど走り味が違うので。

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