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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

アンダンテ(千石)「本を手に取って選べる場所を増やしたい」と創設

公開日: 更新日:

 アンダンテ。聞き覚えのある言葉だと思いきや、「歩くような速さで」という意味の音楽記号だそう。慌ただしい世の中だけど、ゆっくり進もうよ、と付けられた店名だろう。

「旅と暮らし」の本を中心に手がける出版部のある産業編集センターが、不忍通りに面した自社ビルの1階に11月15日に設けた、やはり「旅と暮らし」に関する本を集めた本屋さんだ。

「本屋が減っている中、本を手に取って選べる場所を増やしたい」が書店創設の理由で、最寄りの千石駅付近も本屋ゼロエリアだったという。

「地域の方々が待っていてくださいました。2冊、3冊まとめてお求めになる人がこんなに多いんだと驚いています」と店長の前田康匡さん。スタッフ全員が編集者だ。

 どれどれ、と店内に入ると、最初に目に入る平台に「文京区ゆかりの本」との案内が。「大名庭園」「茗荷谷の猫」「六義園の庭暮らし」……。そして森まゆみ「本とあるく旅」「用事のない旅」は、産業編集センター「わたしの旅ブックス」シリーズの2冊だけど、「全体は、自社本1、他社本9のバランスです」って。奥ゆかしいなー。

エッジの利いた「旅と暮らし」に関する本が8000冊

 35坪に8000冊だから、広々している。向かって右が「旅」、左が「暮らし」の本のエリア。さくっと「旅」の棚を回ろうとして、早々に挫折した。角幡唯介本の数々や「北極男」「日本人とエベレスト」など冒険紀行モノがわんさかあるわ、私には「はじめまして」の南米やアフリカ、ロシアなどのライフスタイルや文化を紹介する本を見つけちゃうわ。いちいち手に取ってしまうからだ。前田さんからも「一歩深い旅を」とけしかけられ……。

 ようやく国内の本が並ぶところに到達するも、NHKの“新日本紀行”を彷彿する「ふるさと再発見の旅」シリーズに食いつく。さらに、拙著「ぶらり大阪 味な店めぐり」も置いてくださってる、と密かに歓喜したりして、忙しい。

「いつ行っても新しい発見がある、と言ってもらえるよう頑張ります」(前田さん)

「暮らし」の本エリアも、料理、育児からエクササイズ、エッセー、手仕事まで、エッジの利いた本が目白押しだった。

◆文京区千石4-39-17/℡03・4329・2999/都営三田線千石駅A4出口から徒歩2分、JR山手線巣鴨駅南口から徒歩10分/10~20時、水曜休み

ウチの推し本

「翻訳できない世界のことば」エラ・フランシス・サンダース著 前田まゆみ訳

 元はブログ。一夜にして世界中に広まり、ニューヨーク・タイムズのベストセラーになった話題書。

「他の国の言語に訳すとき、一言では言い表せない言葉を集め、『現地ではこういう意味で使われていますよ』と紹介。例えばタガログ語の『KILIG』は『おなかの中に蝶が舞っている気分』だとか。洒脱なイラストを添えた、ユニークな単語集です。言葉の背景にある文化や歴史なども浮かんできます」

(創元社 1760円)

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