「家のしごと」山本ふみこ著
著者は子どもの頃、近所の店に買い物や届け物を頼まれた。そのとき、母に「ごめんください」の練習をさせられた。店先でそれがうまく言えればそれでよし、という教え方だった。
スーパーマーケットやコンビニエンスストアが増えて、「ごめんください」を言わなくても買い物ができるようになり、ネットショッピングでは無言でクリックだけすればよくなった。「ごめんください」を言わなくなって、私たちはその心をなくした。「ごめんください」は自分と相手の間を測る〈礼節のものさし〉だった。
なにげない家の仕事やしつけの意味を考えさせる、心がカサカサしている時に読みたいエッセー。(ミシマ社 1500円+税)