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「いくさの底」古処誠二著

 冒頭、「そうです。賀川少尉を殺したのはわたしです」という告白から始まる。第2次世界大戦中期、ビルマ平定後の北部山岳地帯の村に急ごしらえの警備隊が駐屯することになった。それを率いるのが若き将校、賀川少尉だ。一隊が着いたその晩、賀川は何者かに殺されてしまう。犯人は周囲に潜伏する中国の重慶軍か、日本軍を嫌がる村人の誰か、あるいは軍内部の私怨か。疑心暗鬼の中、軍の体面を保つため賀川の死は隠蔽される。ところがその翌々日、新たな殺人が起こり、事態はさらに深刻の度合いを増していく……。

 語り手は現地語の通訳として徴用された民間人の依井。民間人の視点によって、軍隊内部のしがらみや日本軍と重慶軍に挟まれた村人たちの苦悩が客観的に描かれていく。小さな村で起こる2つの殺人は、さながら密室事件のようでもあり、意外な犯人像もまた意表を突かれる。同時に、戦争という非常時における人間の倫理のありさまが根源的に問われ、既存の戦争小説とは一線を画す佳作。

(KADOKAWA 1600円+税)

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