神田のおでん屋「尾張家」には官公庁のエライ人なども来るが、初代の店主はどんなにエライ人でも間違ったことをすると「出てけ!」と言う人だった。後を継いだ息子の嫁、操さんも、男性を30分も待たせた女性に「あなた遅過ぎよ、男性を待たせるもんじゃないわよ」とぴしゃりと言う。男性が女性を待ちながら一人で飲んでいる気持ちを考えると、昭和の女はいたたまれない。満席なのに自分の相手の女性の席が空いているのはお店に申し訳ないと、針のむしろに座っているようなものだろう。
レストランや料理人の取材をしている著者が憧れる「正しい感じ」のある10軒の名店について語る。
(ミシマ社 1900円+税)