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「横浜駅SF」柞刈湯葉著

 横浜駅ではずっと工事が続いていて、終わる気配がないということを、ずいぶん以前に聞いたことがある。一部では、日本のサグラダ・ファミリアとも言われているようだ。

 ならば、その横浜駅がどんどん増殖して広がっていったらどうなるか――それをつきつめたのが本書だ。数百年後の未来、横浜駅は増殖を続けて本州の99%が横浜駅となっている。つまり本州のほとんどが「エキナカ」なのだ。そこでは脳にSuikaを埋め込まれ、人間が管理されている。横浜駅の外で生まれ、Suikaを持たない人間は「エキナカ」に入ることは出来ない。その非Suika住民の三島ヒロトは、ある日、キセル同盟から18キップを渡される。それを持っていればSuikaを持たない人間でも「エキナカ」に入ることが出来るという。ただし、期間は5日間のみ。どこかに身をひそめているはずのキセル同盟のリーダーを助けてほしい、とヒロトは依頼されるのである。もう一つ、別に使命もあるのだが、それは本書をお読みいただきたい。かくて、三島ヒロトの冒険が始まっていく。

 いやはや、面白い。JR北日本とJR福岡が横浜駅と戦っているのもケッサクだ。

 第1回カクヨムWeb小説コンテストで大賞(SF部門)を受賞した作品だが、椎名誠「アド・バード」に強く影響されたと著者があとがきで書いているように、SFロードノベルの楽しさがここにはぎっしりと詰まっている。(KADOKAWA 1200円+税)

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