「遺伝子は、変えられる。」シャロン・モアレム著、中里京子訳
2013年、女優のアンジェリーナ・ジョリーが乳がんの発生率が高くなる遺伝子の変異があったとして、そのリスクを回避するために乳房を切除(その後、卵巣・卵管も)したというニュースは大きな話題となった。こうした遺伝子診断による予防は増えているようだが、遺伝子による疾患の実態やその治療方法となるとよく分からないという人がほとんどだろう。本書は現役の臨床医師にして科学者、そしてノンフィクションライターである著者が、専門分野である遺伝子研究の現状について詳しく述べたもの。
両親から受け継いだ遺伝子は不変というのが常識かと思われているが、実はそれは大きな間違いだという。ある遺伝子が受け継がれても、その形質が表れるかどうかは人と場合によって違うし、遺伝子自体も常に改変されているのだと。野菜中心の食事に改善してがんになったシェフや、ごく普通の鎮痛剤によって命を落とした少女ら、特異な遺伝子疾患の例を豊富に引きながら遺伝子の実態を説明してくれる好著。(ダイヤモンド社 1800円+税)