「21世紀の戦争テクノロジー」エヴァレット・カール・ドルマン著、桃井緑美子訳

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 著者は米国国家安全保障局のアナリストを務めた後、ペンシルベニア大学で世界宇宙システムと政策を中心に国際関係を学び、現在はアメリカ空軍大学で教えている。本書の原題は「科学は戦争を終わらせられるか」。火薬の発明から核兵器の開発にいたる科学と戦争の歩みをたどりながら、はたして科学は戦争をなくすことができるのかを問うている。

 さまざまな検証を経て「科学は戦争を根絶できない」という結論に至るのだが、注目すべきは「未来の戦争」がどうなるかの考察だ。3Dプリンターによる兵器製造、人工感染症の開発、DNA操作による人体改造(痛みや恐怖の排除、筋力の増強など)、軍事用ロボットの実現化、宇宙からのレーザー攻撃……。これらはすでに実戦に用いられているものや試作段階のものなど、決して架空のものではないという。

 著者は戦争の有効な抑止力としてリベラルな民主主義を挙げているが、最大の民主主義国家に専制の影が見える現在、予断は許されない。(河出書房新社 1800円+税)

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