「失踪者」(上・下) シャルロッテ・リンク著 浅井晶子訳

公開日: 更新日:

 ドイツ本国で210万部超の大ベストセラーと帯にある。だからといって日本の読者にも面白いとは限らない、ということを私たちは知っているが、これは疑ったことを反省する。上下2巻を一気読みする面白さだ。

 5年前に失踪した女性エレインを捜す物語である。捜すのは幼なじみのロザンナだ。彼女はジャーナリズムの世界に復帰したいと考えて、この探索の仕事を引き受ける。まず会いにいくのは、エレインが失踪する前夜、一緒にいた弁護士だ。彼はそのために疑われ、仕事も家庭も失ってしまった。もう思い出したくもないだろうから会ってくれないかもしれないが、ここからスタートするしかない。エレインの兄ジェフリーは、その弁護士を今でも疑っている。

 というふうに展開していくミステリーだが、この長編にどんどん引き込まれていくのは、構成が群を抜いているからである。たとえば、途中からある女性が登場して、どうやら男から逃げているらしいのだが、この挿話がメーンの物語とどう関係しているのかがわからないのだ。しかも彼女の正体が明らかになった後も、謎は膨らんでいくから、うまい。

 仕事に復帰したいロザンナと夫の確執、夫の連れ子ロバートの孤独と反抗、ロザンナの兄セドリック(38歳で無職)のさまざまな問題など、人間ドラマがうねるようにつながっていくから目が離せない。これほど読みやすいミステリーも珍しい。(東京創元社 各1260円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元フジテレビ長谷川豊アナが“おすぎ上納”告白で実名…佐々木恭子アナは災難か自業自得か

  2. 2

    中居正広は「地雷を踏んだ」のか…フジテレビに色濃く残る“上納体質”六本木『港会』の存在

  3. 3

    「文春訂正」でフジテレビ大はしゃぎも…今田耕司、山里亮太、カンニング竹山ら“擁護”芸能人の行きつく先

  4. 4

    魅惑のEカップ・田中みな実がまんまる“美バスト”をまたまた披露!

  5. 5

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  1. 6

    フジテレビ騒動で蒸し返される…“早期退職アナ”佐藤里佳さん苦言《役員の好みで採用》が話題

  2. 7

    “天皇”日枝久氏しか知らない「ジャニーズ圧力」「メリーの激昂電話」 フジテレビは今こそ全容解明を

  3. 8

    入社式の仰天舞台裏 コネと忖度が横行するフジの末期症状

  4. 9

    ひっそりと存在消された NHK“車上不倫”人気アナカップル

  5. 10

    《フジが反転攻勢》《どうする文春!》中居正広問題の文春記事訂正に大はしゃぎの違和感…“直取材”対象はどこにいる