大人も満足でかるマジのミステリーだ│「小説 名探偵コナン名探偵の記録者」大倉崇裕著
「小説 名探偵コナン名探偵の記録者」大倉崇裕著
名探偵コナン、マンガでありながら今や日本のミステリー史にとって重要な作品の一つである。高校生探偵・工藤新一が、黒ずくめの組織に薬を飲まされ、小学1年生の江戸川コナンとして難事件に立ち向かっていく。連載30年を超え、アニメはTV放送も劇場版も大ヒット。原作者の青山剛昌さん以外もたくさんの作り手がアニメに関わっているが、私のお気に入りは大倉崇裕さんが脚本を手掛けた作品だ。大倉さんは「福家警部補の挨拶」などの名作ミステリー小説を出している小説家でもある。本著はそんな大倉さんが小説としては初めて出したオリジナルのコナン作品。私得すぎて大興奮で読めた。
一人称視点の物語なのだが、その語り手は江戸川コナンではない。コナンと同じ米花町の中学生、御手洗秀佳。新聞部である彼は工藤新一に取材を申し込もうとするも、行方がつかめず、仕方なくコナン率いる少年探偵団を密着取材することに。大怪獣ゴメラ展を見るために米花美術館に向かった探偵団一行と秀佳。そんな彼らの目の前で爆弾を使った殺人事件が発生する。大混乱に陥る探偵団たち。だがこれは恐るべき連続爆殺事件の序章に過ぎなかった……。
長く続いているからこそ名探偵コナンという作品にはさまざまな切り口がある。コナンのライバルである怪盗キッドら特異なキャラクターにスポットを当てているもの、甘酸っぱい恋愛模様を扱っているものなど。そんな中でも本著はコナンの原点と言ってよい本格ミステリーの要素が色濃く出ている作品だ。劇場版やTVスペシャルになると派手に「爆発」が起きがちというのもコナンあるあるで、本著でも幾度も爆破シーンがあるがそこが大規模テロとかではなく、あくまで個人を狙いそれぞれの現場が殺人ミステリーとして解きがいがあるのがシンプルにミステリーファンとしてうれしい。大人も満足できるマジのミステリーだ。さすが大倉さん。
登場人物がかなり初期のキャラまでしか出てこないので25年ぐらいコナンから離れていた人も十分楽しめる。
ニヤリとする初期の小ネタも書いてあるので、久しぶりに戻りたい人にも、往年のコナンファンにもぜひ読んでもらいたい一冊だ。
(小学館 990円)



















