酒好きにはたまらないセリフが満載「ロング・グッドバイ」レイモンド・チャンドラー著 村上春樹訳
「ロング・グッドバイ」レイモンド・チャンドラー著 村上春樹訳
本書ですぐ思い浮かぶのは、「ギムレットを飲むには少し早すぎる」という名ゼリフ。また物語の初めの方に「本当のギムレット」の作り方についてのうんちくがあるため、ギムレットの印象が強いが、スコッチやバーボンなどのウイスキーも頻繁に登場する。なにしろ、主人公の私立探偵フィリップ・マーロウの友人であるテリー・レノックスは年中酔いどれの状態で、マーロウに依頼されたのが、アルコール依存症の人気作家ロジャー・ウェイドに新作小説を書き上げさせるというもので、全編酒の匂いがふんぷんと漂っている小説であるのだ。
例えばマーロウとレノックスが夕方4時過ぎにバーに入り、レノックスが「夕方、開店したばかりのバーが好きだ。……しんとしたバーで味わう最初のカクテル--何ものにも代えがたい」と語る。またマーロウが酒を控えるようにウェイドに忠告すると、彼はこう答える。
「酔っ払いは何ひとつ学ばない。酔っ払いはただずるずる崩壊していくだけさ……」
酒好きにはたまらないセリフが満載。読後、ウイスキーを傾けたくなること必至だ。
(早川書房 1540円)



















