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中川淳一郎編集者・PRプランナー

1973年生まれの編集者・PRプランナー。多数のウェブメディアの記事にかかわる。日刊ゲンダイ「週末オススメ本ミシュラン」担当。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『それってホントに「勝ち組」ですか?』など。

相次ぐトクリュウ被害対策で絶対必要な「裕福な地方家庭を質素に見せる」工夫…佐賀・唐津の金持ちに聞いた車選びと金の使い方

公開日: 更新日:

1カ月の海外旅行で大金を使うため、日本では贅沢せず

 もう1人紹介しよう。キャリア官僚などを経て70代半ばで、現在、商工会のお偉いさんがいる。間違いなく金持ちなのだが、彼は車すら持っておらず、移動はママチャリで、スーツを着て街中を疾走する姿を時々見かける。ある時実家の掃除をしたら大量の金歯を見つけたという。それを換金したところ、27万円になり、一緒に片づけてくれた3人の若者とともに、高級料理店へ行き一晩で全部使ってしまったという。ここでその27万円を家計の足しにするのではなく、豪快にドーンと使ってしまう。この使いっぷりは金持ちそのものだが、その姿を見せるのは身内だけ。前述の社長と同じで、高級料理店も遠く離れた店だ。こういう使い方なら、周りの人には質素な姿で通せるだろう。

 一体このような「見た目としての金持ち」にならないようにしているのはなぜか? 予約が取れない高級料理店のオーナーシェフは食材の仕入れにスクーターで行き、プライベートの車は1990年代のホンダの小型車だ。そのシェフもこう言う。

「私の店の客単価は一人数万円です。それだけのものを出している自信はありますが、たとえば食材の買い出しをする私がベンツGクラスとか、ランドクルーザーに乗っていたらどう思われるでしょうか 『私たちがたくさんお金を使ってるから大儲けしてるんだろうな……』と邪推されてしまう。だから、車は安いものを選ぶし、家も安い賃貸です。客商売をする者はお客さんより立派な車や家は選ばない方がいいんですよ」

 では、稼いだお金はどうしているのかといえば、一番の出費が毎年1カ月ほどかけてヨーロッパを回る旅行で、各地で料理研究をすることだという。その旅行で大金を使うため、日本にいるときは贅沢をせず、せいぜい毎晩なじみのバーへ行く程度であるという。

■毎年11月の「唐津くんち」では「給料の3カ月分」で周りに感謝を

 私が住む唐津という街特有かもしれないが、毎年11月に「唐津くんち」という祭りが行われる。これについては「給料の3カ月分を使う」なんて言われ方を過去にされていた。「ふるまい」と言い、ご馳走を準備し、知り合いが家から家を渡り歩くのである。そんな時の主役は「アラ煮」である。クエとも呼ばれる巨大な高級魚で、1メートル級になると15万円はするだろう。

 ここで大金を使うのは、見栄のためではなく、知人への感謝の意を示すため。そのためには普段は節約をし、人から妬まれないよう振る舞うことが大事であることが古くから受け継がれているのだ。

 2025年12月に元K-1ウェルター級王者の久保優太が、池袋駅西口の人だらけの繁華街にてフェラーリで徐行運転していたところ、通行人にフロント部分を飛び蹴りされる騒動があった。同情する声はあったものの、「そんな場所で見せつけようとするからそうなる」といった反応も多かった。結局高級車やブランド物のバッグ、さらに時計などは妬みを買うわけだし、下手すりゃ盗まれる。海外であれば、手首を切り落とされて時計を奪われかねない。

 都会よりも人と人の距離が近く、噂話がすぐに駆け巡る地方都市・田舎では裕福であることは極力隠さねばならないのだ。

 以前、唐津の民家に訪問客を装った男が押し入り、現金700万円以上を奪って逃走する事件があった。これもトクリュウと闇バイトによる犯罪だが、どうやらこの家に住む人が飲み屋等で大金を肌身離さず持っていることを喋っていたとの噂もある。

 となれば、闇バイト募集のサイトにターゲット情報が書かれる恐れもあるわけで、地方の人が「カネはあるのに質素に見せる」は、これからトクリュウによる事件がますます過激化し、数も増えるにあたっては重要な自己防衛策になっているのかもしれない。

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