「高倉健の背中」大下英治著
降旗康男が初めて助監督として仕事をした美空ひばりの映画「青い海原」に出演したのが、東映の新人俳優、高倉健だった。
撮影中、製作部長とあつれきがあり、以後、降旗はスター映画の担当をはずされた。ところが、7年後、関わることになったのが高倉健の「昭和残侠伝」だった。当時、撮影所の組合員は午後5時を過ぎると時間外労働を拒否したが、高倉は怒らず、「はーい、お疲れさーん」ときっぱり5時でやめた。そのため、降旗が「今夜一晩で健さんの斬り合いの場面を撮りきる。今回だけは、頼むよ」と言うと、彼らは夜明けまでがんばって撮り終えてくれた。ほかに、木村大作カメラマンら高倉健を囲む人々との関わりを描く。(朝日新聞出版 1800円+税)