小児喘息の息子への気遣いのなさをなじって、妻は息子を連れて出ていった。会社では部下のリストラを迫られる。そして認知症の父が死んだ。そんな状況にいた江原修司は、父の葬儀後、父が自分あてに残した段ボール箱の遺品の中に、握りこぶしほどの大きさの石を見つけた。
その夜、修司は軍艦に乗って敵の襲撃を受けた夢を見る。翌日も軍艦の夢を見た修司は、書店で精神医学の本を見ていて「サイコメトリー」という言葉に出合う。それは物質の記憶を読みとる能力のことだった。父が残したあの石から自分が何かを読みとったとしたら……。
遺品から父のメッセージを読みとったサラリーマンを描く心温まる物語。
(徳間書店 1700円+税)