「青山に在り」篠綾子著
旗本小野家の国家老、小河原左宮の息子、左京は13歳。聡明で剣の達人だが、遅く生まれた子であったため、叔父の将佐が養嗣子として家を継ぐことになっている。
ある日、百姓の子弟に剣を教えている道場で自分とうり二つの百姓の子、時蔵と出会う。年も同じだ。剣も強く、立ち合ってみたが勝負がつかず、引き分けとなる。自分の出自に疑問をもった左京が父に尋ねると、養子ではあるが、父と母の遠縁の血を引いているという。3年後、藩の政策で農兵部隊を創設することになったが、時蔵が百姓の真意を伝える大役を担うことに。悩みながらも、己のいる場所を青山(死所)と定めて懸命に生きよという父の教えに従って生きようとする、幕末の武士の青春を描く。
(KADOKAWA 1600円+税)