「瓦礫の死角」西村賢太著
もうすぐ18歳になる北町貫多は、働いていた洋食屋をたたき出され、住んでいた屋根裏部屋も追い出された。しかたなくまだ持っていた合鍵を使って、母親のアパートの部屋に入り込んだ。夜、仕事から帰った母親は、貫多がいるのを見て、「どうして、家(うち)にいるのよ」と嘆息した。毎日、仕事にも行かず、出前を取って食べているだけの貫多に、母親は「ねえ……いつまで、いるの?」と嫌悪の口調で言うのだが、貫多は居座り続けている。母親は貫多の父である元夫が、出所してここを尋ね当ててくるのを恐れていた。父は貫多が小学5年生のとき、性犯罪を犯した上に警官を刃物で刺して、服役中なのだ。
「群像」に掲載された4編の短編を収録。
(講談社 1500円+税)