イーストウッドが「運び屋」で活写“メキシコ国境の壁”問題
35日間にわたる政府閉鎖からようやく復帰したと思ったら今度は非常事態宣言。米トランプ大統領と議会のメキシコ国境の壁建設予算確保の争いは泥沼の様相を呈している。壁によって麻薬と犯罪から米国を守ると息巻くトランプ大統領だが、まさにこのホットなテーマに切り込んでいる映画「運び屋」(3月8日公開)が話題になっている。
クリント・イーストウッド(88)が10年ぶりに監督・主演の両方を務め、「The New York Times Magazine」の記事を基に作り上げた実話ドラマ。ごく普通の人生を送り、もうすぐ90歳になる一人の高齢者が、前代未聞の大量のコカインを「国境越え」させた史実に基づく。このタイムリーな作品の製作背景について、映画批評家の前田有一氏が解説する。
「米国では2000年代以降、隣国メキシコの麻薬戦争や不法移民が問題になり、このテーマの映画が増えました。とくに『運び屋』が描いているように、米国内に出回る海外産麻薬の7割がメキシコ産。それらを流通させるマフィアの撲滅を公言した市長が即座に殺害されるなど、信じがたい事件も報じられたため、当初はメキシコをほとんど人外の地のように描く映画が多かった。