「がん消滅の罠完全寛解の謎」岩木一麻著
第15回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。余命半年の宣告を受けたがん患者が、生命保険の生前給付金を受け取ると、その直後にがんが消えてしまう――。そんな不可解な連続がん消失事件に医師と研究者が挑むミステリー。
著者は神戸大学大学院自然科学研究科卒業後、国立がん研究センター、放射線医学総合研究所で研究に従事した。本物のがん治療を知っているだけに、その描写は迫力がある。
医師の手術前の説明を患者がどう勘違いするのか、一般人の無知と役所の事なかれ主義によってどんな食中毒が起きるのか、などエピソードも豊富だ。医療に関心のある人にとって勉強になる。
がんを治療する側がどう考えているかを知る手がかりにもなるはずだ。(宝島社 1380円+税)