「メディア都市パリ」山田登世子著
19世紀前半のパリに「パリ便り」というシティー便りが誕生し、12年間にわたってパリの言説について書き続けた。当時は「三銃士」の作者、アレクサンドル・デュマの新聞連載小説が人気で、デュマは複数の下請けライターを抱えて作品を量産したが、デュマの名前しか出なかった。デュマの署名のある新聞小説なら1行3フランだが、デュマと誰々という署名では3スーにしかならなかった。
それに比べてバルザックは人気が落ちて買いたたかれたが、「不滅の借金」を返すため、書き続けた。ゲラの校正のたびに書き直し、書き足してどんどん膨れ上がった。
パリの言説市場をめぐるエピソードを紹介。既刊の筑摩書房版を基に改訂単行本化。
(藤原書店 2500円+税)