仏文学者のコレクション自慢!?

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「病膏肓に入る」鹿島茂著

「ガラクタ収集家」を自称するフランス文学者が、その「お宝」を紹介するモノエッセー。

 冒頭を飾るのは、フランスの歴史において最も不人気な君主・ナポレオン3世の肖像画。放蕩と漁色に明け暮れた揚げ句に普仏戦争を起こして捕虜になった皇帝――そんな通説に疑問を抱き、著者は彼の名誉を挽回する著書をかつて上梓した。現存する肖像画は数点のみ。執筆中から別の肖像画を探していた氏の前に、それは突然現れたという。

 パリの骨董街の画廊で見つけたそれは、第2帝政の公式画家の手による超レアな作品と思われた。念のため価格を確かめると900ユーロ(約10万円)とのこと。

 90万ユーロの聞き間違いかと耳を疑ったが、再度確かめても値は変わらず、即買いしたという。

 ほかにも、毛沢東とスターリンが握手する景徳鎮の着色陶器像や各種の時計などの世界の独裁者シリーズ。あとから状態が良いものが現れたため悔しくて2枚目も買ってしまったスタンランの有名な「シャ・ノワール」のポスター、フランスの戦前・戦後の風俗小説に登場するチョコレートやココアの空き缶など。美術館級の逸品から他人にはゴミにしか見えないものまで60点を紹介しながら、それぞれの品に対する思い入れを語る。

 著者は、冗談交じりにコレクターとは作品の価値を「再創造する人」だと言う。コレクターがコレクションに加えたことで作品の忘却された価値が蘇るとともに、再び新しい命を獲得する。さらにコレクションの他の作品との関連性において芸術家のあずかり知らぬ別の価値がコレクターによって付与されるからだ。

 著者の審美眼によって新しい価値を与えられた「お宝」と、その入手のドラマを楽しむ。

(生活の友社 3000円+税)

【連載】発掘おもしろ図鑑

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