「硝子戸のうちそと」半藤末利子著
著者の祖母で漱石の妻だった夏目鏡子は、料理下手だったらしい。娘の筆子は客があると腕によりをかけて料理を作ったが、鏡子は店屋物をとることしか考えていなかった。
毎週木曜日に漱石の弟子が集まるときは、神楽坂の川鉄から鴨鍋をとるのが常だった。子どもが熱を出して食欲がないときは、洋食屋からコンソメスープをとったりした。
NHKで「夏目漱石の妻」というドラマを放映したときは、鏡子役の女優が半幅帯に色足袋で出てきたので、著者は腰を抜かしそうになった。夏目家ではお客さまが来たときは、お手伝いさんでも白足袋に幅広の帯でお出迎えしたのだ。
漱石の孫が、漱石一家の日常をつづる。
(講談社 1870円)