「谷崎潤一郎 性慾と文学」千葉俊二著

公開日: 更新日:

 谷崎潤一郎は、今でこそ近代日本を代表する文豪のひとりに数えられるが、1960年ごろまでは無思想の作家と称されていた。1920年代後半から階級闘争を標榜したプロレタリア文学が興隆を極め、その後の戦時体制では民族主義的な思潮が台頭。そうした中、女性の美しさのためのみに命を捧げるという谷崎の文学は、無思想と評されたのだ。

 誰もが軍人や官吏、政治、実業、学問で身を立てることを願った立身出世の時代に、なぜ彼は男性が女性の美しさに奉仕することのみに生き、社会の変革よりも官能の充足の方がより大切だという人生観を抱くようになったのか。

 作家がそうした世界観をどのようにして得たのかを、谷崎の人生を振り返り、その作品を読み解きながら明らかにする文学テキスト。

(集英社 860円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  5. 5

    巨人正捕手は岸田を筆頭に、甲斐と山瀬が争う構図…ほぼ“出番消失”小林誠司&大城卓三の末路

  1. 6

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  2. 7

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    「ばけばけ」苦戦は佐藤浩市の息子で3世俳優・寛一郎のパンチ力不足が一因