「谷崎潤一郎 性慾と文学」千葉俊二著

公開日: 更新日:

 谷崎潤一郎は、今でこそ近代日本を代表する文豪のひとりに数えられるが、1960年ごろまでは無思想の作家と称されていた。1920年代後半から階級闘争を標榜したプロレタリア文学が興隆を極め、その後の戦時体制では民族主義的な思潮が台頭。そうした中、女性の美しさのためのみに命を捧げるという谷崎の文学は、無思想と評されたのだ。

 誰もが軍人や官吏、政治、実業、学問で身を立てることを願った立身出世の時代に、なぜ彼は男性が女性の美しさに奉仕することのみに生き、社会の変革よりも官能の充足の方がより大切だという人生観を抱くようになったのか。

 作家がそうした世界観をどのようにして得たのかを、谷崎の人生を振り返り、その作品を読み解きながら明らかにする文学テキスト。

(集英社 860円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  2. 2

    複雑なコードとリズムを世に広めた編曲 松任谷正隆の偉業

  3. 3

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  4. 4

    ドジャース内野手ベッツのWBC不参加は大谷翔平、佐々木朗希、山本由伸のレギュラーシーズンに追い風

  5. 5

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  1. 6

    国宝級イケメンの松村北斗は転校した堀越高校から亜細亜大に進学 仕事と学業の両立をしっかり

  2. 7

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  3. 8

    維新のちょろまかし「国保逃れ」疑惑が早くも炎上急拡大! 地方議会でも糾弾や追及の動き

  4. 9

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  5. 10

    【京都府立鴨沂高校】という沢田研二の出身校の歩き方