「谷崎潤一郎 性慾と文学」千葉俊二著

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 谷崎潤一郎は、今でこそ近代日本を代表する文豪のひとりに数えられるが、1960年ごろまでは無思想の作家と称されていた。1920年代後半から階級闘争を標榜したプロレタリア文学が興隆を極め、その後の戦時体制では民族主義的な思潮が台頭。そうした中、女性の美しさのためのみに命を捧げるという谷崎の文学は、無思想と評されたのだ。

 誰もが軍人や官吏、政治、実業、学問で身を立てることを願った立身出世の時代に、なぜ彼は男性が女性の美しさに奉仕することのみに生き、社会の変革よりも官能の充足の方がより大切だという人生観を抱くようになったのか。

 作家がそうした世界観をどのようにして得たのかを、谷崎の人生を振り返り、その作品を読み解きながら明らかにする文学テキスト。

(集英社 860円+税)

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