「処刑までの十章」連城三紀彦著
夕方に帰宅した純子は、会社からの留守番電話で、朝いつも通りに家を出た夫の靖彦が出社していないことを知る。
その日の早朝、高知の土佐清水市で放火殺人事件が発生。前日、消防署に「午前5時71分」に火災が発生することを予告した絵はがきが届いたという。靖彦の弟の直行は、兄が以前、同じ表現を使っていたことを思い出す。
やがて、靖彦が会社の金を横領していたことも分かる。純子の話から、アサギマダラという蝶を趣味にする靖彦が、仲間の勝美と失踪した可能性が高まる。直行は、火事と勝美との関係を調べるため高知へ。一方の純子は、夫が失踪した日、靖彦らが多摩湖畔の旅館に泊まったことを突き止める。
耽美ミステリーの名手が残した渾身作。(光文社 920円+税)