本橋信宏作家
１９５６年、埼玉県所沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。私小説的手法による庶民史をライフワークとしている。バブル焼け跡派と自称。執筆はノンフィクション・小説・エッセー・評論まで幅広い。“東京の異界シリーズ”第５弾「高田馬場アンダーグラウンド
堀江しのぶの死で涙は枯れ果て悲しみだけが残ったが…
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パワースポーツは、村西とおる率いる芸能人専門のイメージビデオ販売会社だった。
１９８８年当時、モデル、タレント、芸能人を起用した水着やセクシーポーズのイメージビデオがはやりだし、パワースポーツはそのなかでも毎月数タイトルの新作を発売する新興のビデオ会社だった。統率する村西とおるは言わずと知れたＡＶの帝王である。
野田が手がけたのは芸能人のイメージビデオだから、村西とおるを先頭にして口説くわけにはいかなかった。そこで野田が先頭に立って各プロダクションを回り、出演交渉からギャラの交渉まですべて担当した。
「とにかく食っていかなきゃいけないから。新人探しも含めて、パワースポーツをメジャーにしたかったっていうのもありますよね。各事務所もほんとに行きましたもん。自分自身が築いてきた人脈プラス新しく開拓していったっていうことです。新人のモデル、タレントを売り出そうとしているところはどこだろう。そういう知識、情報をつかんで交渉しに行くんです」
プロデューサーの村西とおるが野田義治にパワースポーツの大作シリーズを提案した。
