著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』オールキャリアを代表する傑作のトリセツに注意セヨ

公開日: 更新日:

アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』①(1967年5月26日発売)

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 ついに中期ビートルズ、いやビートルズのオールキャリアを代表する大傑作である。

 傑作、名作、代表作という称賛に、個人的にも異論はない。そして傑作である分、アルバムの素晴らしさを語る記事も多く出回っているので、ここでは補論、一種の取扱説明書として、聴くときの注意点を述べてみたい。

↓………ここから続き………

 まず──収録曲そのものには傑作が少ないことに注意セヨ。

 このアルバムが傑作たるゆえんは、アルバム全体で、ひとつの世界を描き出す「トータルアルバム」「コンセプトアルバム」の先駆けだったこと。

 そして「ひとつの世界」とは「ペパー軍曹のヘタレ楽団」(筆者訳)という架空バンドによる架空コンサートという設定。

 まだヒット曲の寄せ集めと思われていた時代のアルバム/LPに、そんな斬新な設定を持ち込んだことこそが、傑作性の核心であり、逆にいえば、個別の収録曲それぞれは佳作が多いと言い切りたい。

「テーマだけでなく曲も完璧!」と神棚に祭ってしまうことは、逆にアルバムの価値を見誤ってしまうと私は考える。

 次に、録音機材がまだまだ貧弱だったことに注意セヨ。

 つまり、架空バンドの架空コンサートという高度で複雑な録音を、たった4トラックだけで行っているということだ。

 トラックとは、音が録音されるテープの「道」のこと。それがたった4本しかない。というか、『抱きしめたい』のときと同じトラック数なのだ。

 そういえば1980年代、私が学生時代に熱中したカセットテープ多重録音用のデッキも4トラックだったな。

 そんな貧弱な機材で、これだけの複雑な編曲、さまざまな楽器、さらには架空コンサートに集まった観客の歓声や拍手、笑い声まで録音しているのである。驚くべきことに。

 という機材のことまで、ある程度認識しておかないと、このアルバムのすごみが伝わってこないのだ。

 最後に。『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』に耳を澄まセヨ。収録曲自体は佳作が多いと書いたが、ラストの『ア・デイ~』は、まさに傑作。同時期に作られた『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』と並んで、ビートルズ全作品を代表するツートップである。

 なので、架空コンサートのアンコール的な扱いにもかかわらず、個人的に『サージェント・ペパーズ~』は「『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』かそれ以外か」という感じで捉えている。

 では、その『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』、どんな曲なのか。 

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