【危機のイラン】停戦したものの結局はイランの勝ち?トランプの誤算はまだまだ続くのか。

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「イランとアメリカ、そしてイスラエル」高橋和夫著

「イランとアメリカ、そしてイスラエル」高橋和夫著

 イランとアメリカの関係が危うい──そう感じて本書の執筆に著者が取り組んでいた昨年半ば、ついにイスラエルとアメリカがイランを攻撃した。以後の展開を著者は「情勢がシナリオを追い抜いて進行している」という。

 もともとイランはアメリカの中東外交にとって拠点だった。王政時代のイランは最大の親米国だったのだ。その後、イラン革命が起こってアメリカには悩みの種になった。

 長年の中東情勢ウオッチャーである元放送大学教授の著者だけに、過去半世紀にわたる経緯を見る目が細かい。イスラエルへの注視も欠かせない。特にガザへの圧力と並行したレバノンのヒズボラへの攻撃は苛烈だった。レバノンはイスラム教のほかキリスト教もまじる多宗教国。それがヒズボラ誕生の背景でもあった。ほかにシリア情勢にも目を配りながらトランプが2度にわたる政権でイランに対して行ってきた振る舞いも検討する。米との交渉の前面に立つイランのアラグチ外相は元駐日大使。漢字で「新久地」(あらぐち)と書いた名刺も持っていたそうだ。 (朝日新聞出版 1540円)

「イラン現代史」黒田賢治著

「イラン現代史」黒田賢治著

 イランの現代史は1979年のイラン革命の前、パーレビ(パフラヴィー)の時代に始まる。書名どおり、そこに焦点を当てたのが本書。著者は中東の地域研究が専門の国立民族学博物館准教授。

 パーレビ王政を倒したのがホメイニ(ホメイニー)師だが、その没後の権力構造は日本では専門家以外にあまり知られていないだろう。新たな最高指導者に選ばれたのは大統領のハメネイ(ハーメネイー)師。しかしホメイニ師の影響が一般信徒の間に残っており、ハメネイ師の権威には揺らぎがあった。特に法学者として信徒に力を持つアラーキー師がホメイニ没後もその言動に従うことを認めたので、急進派と保守派の対立が激化した。

 イランならではの政治構造が引き起こす不安定性などの問題点を詳述してあるのが本書の持ち味だろう。もちろんイスラム法治国家といえども経済は普遍的。世界中が新自由主義(ネオリベ)政策に舵を切った1980年代末にはイランも追随し、国営企業の民営化を多数実施した。当初は王政下で抑圧に苦しんだ庶民の救済が重視されたが、やがては福祉の縮小に向かわざるを得ない。イランもまた国内問題はアメリカや日本と同質の悩みを抱えていることがわかる。 (中央公論新社 1155円)

「イラン戦争 アメリカ・イスラエルの策略」宮田律著

「イラン戦争 アメリカ・イスラエルの策略」宮田律著

 アメリカとイスラエルによるイラン攻撃は、国際法を無視したものであり、現在も対立・混乱が続いている。この両国に対して、日本はいかに対処するべきなのか。世界中を混乱に陥れているトランプとネタニヤフは、はたして何を求めているのだろうか。本書はイラン戦争の背景にある相互不信の歴史だけでなく、宗教イデオロギー、政治・社会構造を深くまで掘り下げることで問いに答えようとする。

 著者は現代イスラム研究センター理事長。イランの文化や精神性に触れながら日本との関係や共通性を紹介し、日本が取るべき姿勢を説く。高市政権はアメリカの顔色をうかがうだけの追随外交やイランを軽視する姿勢を改め、中東の主要国であるイランを尊重すべきだという。なぜなら日本はこれまでの歴史もふくめ、アメリカとイランの「橋渡し役」として独自の外交努力を行うことのできる立場にあるからだと力説している。 (平凡社 1100円)

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