著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

ビートルズ来日スペシャル③「ピース」を望んだジョンの答えに記者団から笑いが起きた

公開日: 更新日:

ビートルズ来日スペシャル③

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 1966年6月29日、早朝3時40分に羽田空港に到着してから半日後となる午後3時15分、ビートルズは、宿泊している東京ヒルトンホテル(現:ザ・キャピトルホテル東急)の「紅真珠の間」で記者会見を行った。

 到着からたった半日後である。そして翌日の夜には日本武道館での初回公演が控えているのだ。まさに犬のように働く「ア・ハード・デイ」だ。

 さて、ビートルズの数々のインタビューはとても有名である。その当意即妙、ウイットにあふれた受け答えは、数々の本や記事で引用されている。

 しかし、日本での記者会見は正直、印象的なものではない。動画が残っているが、さすがに疲れもあっただろう。はつらつとしたノリが感じられない。むしろ日本に着いてから、たった半日、よく会見の場に出てきてくれたという感じさえする。

 あと、今から見れば、質問のレベルが正直、かなり残念だったことが、インタビュー巧者としてのやる気をそいだはずだ。

↓………ここから続き………

 髪形についての質問などは、その最たるものだが、音楽の話にしても「これまでリズム中心の音楽だったのが、『イエスタデイ』『ミッシェル』あたりからバラード調に変わってきたのはなぜか?」なんて、よくぬけぬけと聞けたものだ(ジョージが呆れた感じで対応)。

 また外国人記者クラブからは「日本の若者に伝統的な日本の価値観を見失う悪例を持ち込んだと言われているがどう思う?」と「それ、ビートルズに聞いてどうするんだ?」的、嫌みな質問が飛んだ。

 しかしポールが「もし日本の舞踏団が英国に来ても、誰も英国の伝統的な作法を侵しているとは言わないよ」とさすがの対応を見せる。かっこいい。

 ただこのやりとりについては、前々回紹介した「ビートルズなんかに神聖な武道館を貸すな」的な極東の保守派の言い分を、外国人記者があてこすったものなのかもしれないが。

 そしてインタビュー最大の聞きどころは、中盤に出てきたこれ──「あなたがたはすでに名誉と財産を十分に得たと思うが、幸せか? 次に何を望むか?」

 対して、ジョンが真面目なトーンでこう言う。

「ピース(平和)」

 今、動画を見て驚くのは、その瞬間、記者陣から笑いが起きることだ。

 まさか、遠くイギリスから騒がしい音楽をやりにきた長髪の不良青年と、この言葉が不釣り合いに思われた。

 ジョンが『平和を我等に(ギヴ・ピース・ア・チャンス)』をリリースするのは、たった3年後のことである。 (この項つづく)

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【連載】スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ

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