「世界一ラクな『がん治療』」近藤誠、萬田緑平著
がんの標準治療に異を唱え、「がんと闘うな」という主張で知られる近藤誠医師。外科医として多くのがん治療を経験した後、在宅緩和ケア医に転じた萬田緑平医師。多くのがん患者と向き合ってきた両氏が、がんという病とどう向き合い、どう生きるかを語り合う。
近藤氏は「がんは本来、亡くなる直前まで、歩いたり話したりできる病気です。むやみに臓器を切り取ったり、抗がん剤を打ったり、点滴をするから、やせ細って苦しみ抜いて、大切な人に『さようなら』さえ言えずに、死ななければならないのです」と言い、萬田氏は「がんと闘わないこと、治療がつらいと思ったら『やめる』ことを選び、自然に任せていれば、がんでも決して、のたうちまわって死ぬことはない。むくみや、腸閉塞や、肺炎の苦しみもない」と指摘する。
「何もしなかった場合の利点」を数多く目の当たりにしてきた両氏は、いわゆる極端な「医療否定」ではなく、安易に可能性が低い手術や抗がん剤治療を行って苦しむより、「治療をあきらめるわけではなく、治療をやめて自分らしく生きる」という選択肢を提示する。治療方針を決めるのは患者自身だが、それを決めるためのひとつの指針が示されている。(小学館 950円+税)