「みだら英泉」皆川博子著
絵師の卵・善次郎は、北斎の娘・お栄と出かけた浅草大円寺の「花相撲」で顔見知りの長次郎から声をかけられる。長次郎は、四渓淫乱斎の号で出した艶本の作者が善次郎だと気づいていた。宮侍だった父の死後、仕官して腹違いの妹3人を養っていた長次郎だが、枕絵を描いて版元に売り渡していたのが発覚、禄を失ってしまった。
今は師匠の英山や、北斎などから紹介される枕絵や浮世絵の仕事をこなしながら、里子に出した妹たちの養育料を払い続けていた。善次郎は、いずれ蔦屋並みの版元になると大望を抱く長次郎に請われ、彼の仕事を受ける。長次郎の計らいで、3人の妹たちも江戸に戻るが……。
浮世絵師・渓斎英泉の生きざまを妹たちとの関係から描き出す時代小説。(河出書房新社 740円+税)