「刑事の怒り」薬丸岳著
アパートで、ベッドに置かれたスーツケースから80代の幸田二美枝と思われる腐乱死体が発見された。通報したのは同居していた娘の華子だ。近隣の住人の話によると、4年ほど前に骨折で入院して以来、姿を見かけていないという。
死亡したのは3年ほど前らしい。華子が死亡届を出さなかったのは、年金の不正受給が目的かと思われたが、年金は引き出されていなかった。華子は離婚が原因でうつ病になったが、5年前から働き始めていた。自首したのは、隠し続けることに疲れたからだという。刑事の夏目は、以前住んでいた厚木で二美枝が俳句教室に通っていたことを知る。(「黄昏」)
刑事が現代社会のひずみが生んだ犯罪と向かい合う短編4作。(講談社 1500円+税)