「宿命と真実の炎」貫井徳郎著

公開日: 更新日:

 白バイ警察官が交通事故を起こして死亡。それからほどなく別の警察官が刺殺され、さらに3人目の犠牲者が出た。3人はかつての同僚で、18年前に起きた交通事故にかかわっていた。これは、警察に恨みを持つ人間による、警察官連続殺人事件なのか?

 山本周五郎賞受賞作「後悔と真実の色」の続編に当たる警察小説。不倫スキャンダルで辞めた天才刑事、西條輝司も再登場する。

 所轄署の刑事、高城理那は、男社会の警察組織の中で肩肘を張りながら奮闘する。一方、読者には犯人が早い段階で明かされる。幼いころ、父親の逮捕によって離ればなれになった義理の兄弟、誠也とレイ。大人になって再会した2人は、自分たちを引き裂いた警察への復讐を生きる糧にするかのように犯罪を重ねる。

 伝説の男、西條の存在が気になる理那は、西條の元に日参して捜査へのアドバイスを頼み込み、着実に真相に近づいていく。理那は失明した元警察官の父と2人暮らし。西條は天職を失って、くすぶっている。復讐に燃える義理の兄と弟は、はたからはうかがい知れない深い因縁で結ばれている。

 いくつもの物語が入り乱れて収束していくその先に衝撃の結末が待っている。(幻冬舎 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  3. 3

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 4

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  5. 5

    来春WBCは日本人メジャー選手壊滅危機…ダル出場絶望、大谷&山本は参加不透明で“スカスカ侍J”に現実味

  1. 6

    詞と曲の革命児が出会った岩崎宏美という奇跡の突然変異種

  2. 7

    高市政権にも「政治とカネ」大噴出…林総務相と城内経済財政相が“文春砲”被弾でもう立ち往生

  3. 8

    「もう野球やめたる!」…俺は高卒1年目の森野将彦に“泣かされた”

  4. 9

    連立与党の維新が迫られる“踏み絵”…企業・団体献金「規制強化」公明・国民案に立憲も協力

  5. 10

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋