「宿命と真実の炎」貫井徳郎著

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 白バイ警察官が交通事故を起こして死亡。それからほどなく別の警察官が刺殺され、さらに3人目の犠牲者が出た。3人はかつての同僚で、18年前に起きた交通事故にかかわっていた。これは、警察に恨みを持つ人間による、警察官連続殺人事件なのか?

 山本周五郎賞受賞作「後悔と真実の色」の続編に当たる警察小説。不倫スキャンダルで辞めた天才刑事、西條輝司も再登場する。

 所轄署の刑事、高城理那は、男社会の警察組織の中で肩肘を張りながら奮闘する。一方、読者には犯人が早い段階で明かされる。幼いころ、父親の逮捕によって離ればなれになった義理の兄弟、誠也とレイ。大人になって再会した2人は、自分たちを引き裂いた警察への復讐を生きる糧にするかのように犯罪を重ねる。

 伝説の男、西條の存在が気になる理那は、西條の元に日参して捜査へのアドバイスを頼み込み、着実に真相に近づいていく。理那は失明した元警察官の父と2人暮らし。西條は天職を失って、くすぶっている。復讐に燃える義理の兄と弟は、はたからはうかがい知れない深い因縁で結ばれている。

 いくつもの物語が入り乱れて収束していくその先に衝撃の結末が待っている。(幻冬舎 1800円+税)

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