「仏像ぐるりのひとびと」麻宮ゆり子著
雪嶋は、浪人時代に交通事故に遭い、2浪の末に京都の大学に進学。幼いころから仏像が好きだった雪嶋は、学生課の掲示板で見つけた仏像修復のアルバイトに応募する。修復師の門真は、初日から傷みの激しい鎌倉時代の木仏に樹脂を注入する作業を雪嶋に任せる。木仏は20体もあり、雪嶋は次第に作業に飽きてくるが、この仏像に祈りを捧げてきた当時の人々に思いを馳せることで何とか乗り切る。
ある日、個人から新たな仏像の依頼が舞い込んだ。損傷が激しいその仏像について調べ始めた雪嶋は、情報を求めて大学の「のんびり仏像めぐり研究会」なるサークルに足を運ぶ。
仏像を介した人々との出会いによって再生、成長する雪嶋を描く長編。 (光文社 740円+税)