「天の光」葉室麟氏

公開日: 更新日:

 主人公・柊清三郎は福岡藩の武家の三男に生まれたが、仏師を志し博多の高坂浄雲に入門。腕を見込まれ浄雲の娘おゆきの婿となるが、己の仏像に仏性を見いだせない清三郎はおゆきを置いて京都へ修行の旅へ出る。3年後、成果を得られぬまま博多に戻ると師は強盗に殺され、おゆきは辱めを受け行方不明になっていた。深い悔恨を胸に清三郎はおゆきを救うことに命を賭していく……。

「中学生の頃に、ある仏師が仏像を彫り続けるがなかなか仏様にならない、それがある日突然、仏になるという物語を読んだんです。子どもながらにそういうことは実際にあるのじゃないかという思いがずっとあり、いつか書いてみたかった」

 本書のもうひとつの柱は、ストレートな愛。

「一直線な愛を書いてみたいというのがまず最初にありました。取り返しのつかないことをしでかしてしまった男が、取り返さなくてはいけないと愚直に突き進んでいく。そういう一直線な純粋さですね」

 家族を捨ててまで自分の彫る木に仏性を見いだしたいと願う清三郎は、純粋ではあるが、一方でひどく利己的に見える。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」