「里山奇談 めぐりゆく物語」COCO、日高トモキチ、玉川数共著
神の棲む山と人の暮らす地の間に広がる里山。そこにはさまざまな生き物とともに、不思議が息づいている。虫や動物を追い、野山や川を渡り歩く“生き物屋”でもある著者たちがそのフィールドワークの中で、収集した不思議譚。
「蝗の日」。ある日、山道で虫好きの娘さんと並んで歩いていた。そのとき彼女は母の幼いころの話をはじめた。母は頻繁に両親から蝗取りを頼まれ、その日も妹を連れ、稲刈りが済んだ畔を蝗を取りながら歩いていた。ふと先を行く妹が気になり、声をかけようと一歩踏み出した途端、体が岩のように固まり、頭をわしづかみにされたような激痛が走った。そこで祖母から教えられた南無妙法蓮華経を必死で唱える。やがて痛みは薄れたが母は今でもそれが物の怪の仕業と信じている。
(KADOKAWA 1400円+税)