アポロクリエイトHD社長・鳴海千尋氏 独立時に手にした1冊
留萌はかつて、大和田炭鉱、浅野炭鉱、昭和炭鉱といった留萌炭田があり、昭和30年代までは大勢の人々でにぎわった。しかし、炭鉱が閉山すると、町は急速にしぼんでいく。
「父は炭鉱の経理マンとして働いていました。しかし、私が幼稚園の頃、脳出血であっけなく逝ってしまった。そのため、母は小さな商店を切り盛りしながら幼い僕と姉を育ててくれた。『お母さんはいつ寝ているのか』と幼心にいつも思っていました。そんな小さな頃は、毎月、書店から届く『少年少女世界の名作文学全集』(小学館)を楽しみにしていました。『ああ無情』『シャーロック・ホームズの冒険』『トム・ソーヤーの冒険』……。姉とどちらが先に読むか競争するのですが、いつも私が後でした。その中でも大好きだったのが、少年が小さなアリに変身して冒険する『チョンドリーノ』という物語です。ミクロの世界というか、不思議な世界観に引き込まれました」