「腸科学」ジャスティン・ソネンバーグほか著、鍛原多惠子訳
がんや糖尿病、アレルギーに自閉症など、原因も症状もさまざまなこれらの疾患を、一気に抑え込む研究が世界各国で進んでいる。その方法とは、マイクロバイオータと呼ばれる、腸内の微生物相を良好に保つことだ。
腸内にどんな微生物がすみつくかは、実は生まれた瞬間に決まる。母親のマイクロバイオータは、生まれてくる子に最善の初期微生物を植え付けるため、妊娠中に大きく変化する。しかし、経膣分娩の場合と比べて、帝王切開で生まれた赤ん坊には、これが植え付けられにくいという。
ただし、マイクロバイオータは食事の変化に速やかに反応するため、いつからでも整えることが可能だ。例えば、炭水化物をしっかりと取ること。微生物のエサとなる炭水化物が不足すると、彼らは腸壁の粘液層に含まれる栄養を吸収するようになる。すると、腸壁が薄くなって荒れ、有害な微生物が増えるリスクも高まるそうだ。
高齢化して食事の量が減るだけでも、マイクロバイオータは弱体化する。巻末の、腸にいいレシピ集を参考に、微生物たちを元気に保ちたい。(早川書房 1900円+税)