「大奥づとめ」永井紗耶子著
元御家人の長女である結衣は親が決めた婿取りから逃げるため、大奥づとめに入り、「利久」と名前を改める。大奥での出世といえば、上様のお子を産んで側室になることと思っていたが、お手つきの「汚れたかた」ではなく、お手のついていない奥女中「お清」として出世する道があるらしい。出世を望む利久は「お清」を選び、御台様の世話をする「御三の間」から、やがて奥の出来事を記録する「祐筆」で務めるようになる。利久は日々の中で大奥でのさまざまな女の生きざまに触れるうち、女たちの聞き書きを始める……。(「ひのえうまの女」)
ほか「いろなぐさの女」「ねこめでる女」など全6編を収録。大奥に“就職”した女たちの葛藤と情熱、苦楽を描く連作時代短編集。
(新潮社 1600円+税)