「わたしは、ダニエル・ブレイク」は明日の日本の姿だ
神奈川県小田原市で、生活保護受給者支援の担当職員らが10年間にわたり「保護なめんな」「不正受給はクズ」などの英文が書かれたジャンパーを着ていた問題で市民の怒りが収まらない。マグカップや携帯ストラップなど同様のグッズは計8種も存在し、保護係長発案のもと職員がデザインして製作されていた。人事異動の記念品にして悦に入っていたというのだから正気の沙汰とは思えない。
こうした福祉行政の上から目線で威圧的な悪しき側面に、遠き英国から強烈なパンチをくらわすのが映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」。カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞した英国の名匠ケン・ローチの社会派ドラマだ。映画批評家の前田有一氏が絶賛する。
「デビューから50年近く、一貫して弱者の立場から社会批判を行ってきたケン・ローチ監督は、高齢で体調も優れず前作で引退を表明していましたが、非人道的な福祉行政に苦しむ人々を放っておけず再び立ち上がりました。持ち前の温かみある人間描写と、徹底取材によるリアルなストーリーからは監督の怒りと信念がひしひしと伝わってくる。パルムドールにふさわしい、心揺るがす傑作です」