女優&ダンスアーティスト仲万美 表現者としてのこだわり
公開中の映画「ドリームズ・オン・ファイア」(DOF配給)の主演を務めるのは、女優兼ダンスアーティストの仲万美(28)。NHK紅白歌合戦では椎名林檎のアーティストダンサーを務め、マドンナからのビッグオファーでワールドツアーに同行したこともある。ダンサーにとどまらず、女優に挑戦するのはなぜなのか。ミステリアスな彼女の本心に迫る。
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近年はダンサーとして活動せず、女優に専念。何か転機があったのか。
「ダンサーとしてチームで活動していたのですが、4年前に解散。それからもっとダンスを楽しむために、全国のイベントに出たり、実家のある熊本県の復興のためにワークショップを開催したりしました。やりたいことを全部やって、もういいかなと思ってしまったんです。というのも、どの現場に行っても、『仲万美だ!』って注目されてしまう。ありがたいことですが、周りに持ち上げられる環境が苦手。このままだとダンスまで嫌いになりそうで、思い切ってやめたんです。すると、そのタイミングで映画出演のオファーが来たんです。全てが刺激的で楽しくて、徐々に女優のお仕事をするようになったんです」
「ダンスは楽しむものなのに、根本を忘れてしまっている人が多い気がします」
本作で演じるのは、ダンサーを目指して上京するユメ。目標を達成するための努力を惜しまない野心的な役だ。仲の人生と通じる部分がありそうだが、ダンスが好きということ以外は共通点がないそうで……。
「ユメは<ダンス好き、だから上を目指す>という意欲的な人物だけど、自分は“上に行きたい”がない。競争が好きじゃないんです。解せないのは、コンテストなどでダンスに順位をつけられること。勝負のために頑張るという構造も社会的です。審査員の好みやさじ加減であって、他の人の評価だったら順位は変わるかもしれない。ダンスは楽しむものなのに、根本を忘れてしまっている人が多い気がします」
コロナ禍で“当たり前”だと思っていた映画や舞台がなくなり…
コロナ禍では、表現への思いが明確になった。
「エンタメってこんなに人間の心に影響するんだなと改めて思いました。自分はもとより、作品を楽しみにしているお客さんの気分を上げてくれるもの。当たり前だと思っていた映画の公開や舞台ができなくなって落ち込むこともありました」
根っからのポジティブ人間だという仲。どうやって切り替えた?
「大事なのは真剣に向き合わないこと。答えを探すにしても、ネガティブな悩みって沈むしかないじゃないですか。そこから気持ちを引き上げることって難しいと思うんです。よく周りから相談されるのですが、『どうしたらいいかって悩んでる時点でポジティブだよね? もう前を向こうとしてるよね』と励ましています」
一歩ずつ前へ進むしかない。
(取材・文=白井杏奈/日刊ゲンダイ)
♡なか・ばんび 1992年、熊本県出身。加藤ミリヤやBoAらのバックダンサーを務める。2015年、マドンナのバックダンサーとしてワールドツアーに同行。14~16年、19年には「NHK紅白歌合戦」で椎名林檎のアーティストダンサーとして出演。19年、映画「チワワちゃん」で女優デビュー。舞台「Rock オペラ『R&J』」(19年)など多数出演。