金井真紀(文筆家・イラストレーター)
6月×日 スリランカ人の友だちがキャッサバのケーキを作ってくれた。キャッサバは中南米、アフリカ、南アジアなど暑い場所でよく栽培されていて、その根っこ(芋)や葉っぱを使って、めくるめく料理のバリエーションがある。最近わたしは移民の友だちに会うたびに、キャッサバ情報を集めてニヤついている。
6月×日 アラン・マバンク著「割れたグラス」(国書刊行会 2860円)を読み始めたら、どハマりした。著者はコンゴ人、舞台はコンゴ共和国の港町にある一軒の飲み屋。酔っぱらいのおじさんがノートに書きつけた体裁の小説なのだけど、著者の仕掛けがただごとじゃない。文学作品のタイトルや歴史上の人物の名台詞などが随所に織り込まれているのだ。おもしろくてページをめくる手が止められない。もちろんキャッサバも出てくる。
6月×日 気になっていた中村隆之さんの新書「ブラック・カルチャー」(岩波書店 1056円)をついに購入。数日かけてじっくり読む。中南米原産のキャッサバがアフリカの重要作物になったのも、アフリカ原産のオクラがクレオール料理に欠かせない食材になったのも、背景にあるのは奴隷貿易だ。記録によれば、奴隷船に乗せられて大西洋を渡ったのは1250万人。世界史の中でもクソ最悪な出来事だけど、そのせいで音楽もアートも食文化もつながっているのだった。興味深いエピソードがたくさん詰まっていて、ずっと本棚に置いておきたい1冊だ。
6月×日 寝転がってSNSを見ていたら、気になる新刊を発見。岸和田仁ほか編著「食文化からブラジルを知るための55章」(明石書店 2200円)。ムクリと起き上がって本屋さんへ。手にとってみると、果たしてマンジオッカの章があるではないか。即決でレジに持って行く。マンジオッカとは、ポルトガル語でキャッサバのこと。ブラジルのマンジオッカ文化も相当ディープらしい。それにしても明石書店の「○○を知るための△章」シリーズはすごいなぁ。ラインナップを見るだけで胸が躍るよ。