「裸足でかけてくおかしな妻さん」吉川トリコ著
「裸足でかけてくおかしな妻さん」吉川トリコ著
作家の金村太陽と付き合っていた楓は、妊娠して、金村の岐阜の実家に身を寄せることになった。古い駅舎に降り立ったとき、世界の果てに来てしまったような気がした。
土壁の古ぼけた民家に着いたら、金村の妻、野ゆりにたぬきと間違えられた。野ゆりは都会の女の面影がなく、少女っぽい雰囲気がある。金村は週刊誌の連載が始まるからと言って東京に帰り、楓は野ゆりと2人になった。金村は初めからそのつもりだったに違いない。野ゆりは麦茶を冷蔵庫で冷やさず、常温で飲む。楓の嫌いなタイプの女だ。
突然、作家の妻と暮らすことになった作家の愛人の生活を描く、奇妙だけれど爽やかな物語。
(新潮社 2255円)