認知機能の低下に真っ先に気付くのは自分自身
日本を代表する歌手、橋幸夫さんがアルツハイマー型認知症の中等度であることが、所属事務所の社長によって5月に発表されました。報道によると、2022年12月に軽度のアルツハイマー型認知症と診断され、昨年末に中等度へ進行したとのこと。
日本ではがんを公表する著名人はいるものの、認知症に関してはそう多くはありません。橋さんは体調を見ながら今後も歌手活動を続けるとのこと。今回の発表は認知症の社会的理解を深める意味でも、素晴らしいことだと思っています。
橋さんは中等度とのことですが、認知機能は正常から認知症まで、全部で6段階に分けられます。認知機能正常→SCD(主観的認知機能低下)→MCI(軽度認知障害)→認知症・軽度→認知症・中等度→認知症・高度です。
認知症に対し「本人は、認知機能の低下に気付いていない」と捉えている人が多いですが、実際のところ、認知機能の低下に真っ先に気付くのは本人です。
第1段階であるSCDは、本人だけが物忘れが増えたことに気付いている状態です。それはちょっとした変化ですので、周囲はだれも気付きません。たとえだれかに「最近物忘れが多くて」と話しても、「そんなのだれでもそうだよ。普通だよ」と返されるレベルです。
第2段階のMCIになると、周囲も「おや?」と思い始めます。
しかし、認知症に結びつけて考えるレベルではないかもしれません。特にMCIの最初の方では、仕事や家事に支障が出るほどではないでしょう。検査をすると認知症とは診断されないものの、認知機能が低下したグレーゾーンの状態です。
認知症発症に至ると、軽度、中等度、高度と進むにつれ、これまでできていたことができなくなっていきます。ただ、橋さんを見ていてもわかる通り、ある段階までは仕事、家事をこなせ、1人でも社会参加が可能です。
MCIについては認知度が徐々に高まってきたように思います。ぜひSCDにまで着目していただきたい。自分はもしかして、と思ったら、専門家の診察を受けてほしい。なぜなら今は、認知症は早期予見・早期予防の時代だからです。