不必要な低価値医療…どんな医者が提供しているのか?
治療を行っても、病状や健康状態にほとんど利益のない医療を「低価値医療(ロー・バリュー・ケア)」と呼びます。例えば、ウイルス性の風邪症状に対する抗菌薬や、神経痛に対するビタミン剤などを挙げることができます。
これらの医療は、その有効性を裏付ける質の高い科学的根拠に乏しく、効果が期待できないばかりか、副作用のリスクも懸念されます。そんな低価値医療を提供している医師の特徴を検討した研究論文が、米国医師会が発行している健康政策に関する専門誌に、2025年6月6日付で掲載されました。
日本で実施されたこの研究では、開業医1019人(平均56.4歳)と、その患者254万2630人(平均51.6歳)が調査の対象となりました。これらの患者に提供された医療サービスのうち、有効性に関する質の高い科学的根拠が乏しい10件の低価値医療(薬物治療5件、診断に必要な検査3件、処置2件)の提供頻度や、提供した医師の特徴が分析されています。その結果、低価値医療の提供頻度(患者100人あたり)は、年間で17.2件でした。また、患者の10.9%が、少なくとも1つの低価値医療を受けていました。さらに、低価値医療の提供頻度の高い(上位10%)医師が、低価値医療全体の45.2%を提供しており、特定の医師に偏っている可能性が示唆されました。
本研究ではまた、低価値医療を提供している医師の特徴として、60歳以上であること、専門医資格を有さないこと、西日本に勤務していることが明らかにされています。論文著者らは「低価値医療を提供している医師の特徴を理解することで、政策的な介入アプローチの開発に役立つ」と結論しています。