「プロ棋士という仕事」青野照市著
将棋は敗れたときに相手に「負けました」と頭を下げなければならない精神的に厳しい競技だ。ずっと勝ちだと思っていたのに、最後に大悪手を指して負けたときは悔しくて「負けました」の声が出ないこともある。著者のいちばんつらかった「負けました」は故村山聖八段戦だった。負ければB級2組への降級の可能性が高かったからだが、他の棋士が降級したため著者は降級を免れた。数カ月後、村山八段ががんで亡くなり、将棋を指したくても指せない人がいると思ったときから「負けました」が怖くなくなった。
対局中の右脳と左脳の葛藤、「目隠し将棋」ができる理由など、現役の棋士が将棋界のナゾを解説。(創元社 1400円+税)