「大鮃」藤原新也著
イギリス人の父と日本人の母の間に生まれた太古は、依存を専門とする精神科医のMを受診。強さを求め29歳からネットゲームの中で修業を積んできた太古だが、女性恐怖症は克服できなかった。太古が6歳のときに父が自殺したと聞いたMは、欠損した父性を獲得するため太古に父の故郷への旅を勧める。
太古の父はスコットランド最北端にあるオークニー諸島の生まれだった。Mの勧めに従い旅に出た太古は、2日かけメインランド・カークウォールに降り立つ。翌日、旅行代理店が探してくれたガイドが太古をホテルに迎えに来た。マークと名乗った男は、どう見ても80歳を過ぎた老人だった。
父性の喪失とその獲得をテーマにした著者10年ぶりの書き下ろし小説。(三五館 1600円+税)