「マトリョーシカ・ブラッド」呉勝浩著
5年前、神奈川県の陣馬山に遺体を埋めたと110番通報があった。「埋まっているのは香取富士夫だ」と聞いて、彦坂巡査部長は現場に向かう。
発見された白骨死体の横にはマトリョーシカが埋まっており、その中には液体の入った小瓶があった。香取は7年前のムラナカ事件の関係者だった。東雲総合病院でムラナカ製薬が開発した抗がん剤の新薬を投与されていた患者が2人、急死した。内科部長だった香取にムラナカ製薬との癒着の疑惑がかけられたが、部下の内科医が自殺したため不起訴となった事件だった。続いて八王子で発見された死体のそばにもマトリョーシカが置かれていた。
組織ぐるみで隠蔽したはずの事件に向かい合う刑事を描く。大藪春彦賞受賞第1作。
(徳間書店 1800円+税)