尾上辰之助追善 菊五郎が結実させた完璧なアンサンブル

公開日: 更新日:

 玉三郎、仁左衛門とも、舞台での若さは驚異的だ。親子ほど歳の離れている松緑と並んでも、同世代にしか見えない。

 玉三郎・仁左衛門はしばらく共演していなかったが、昨年から、夫婦や恋人、あるいは兄妹の役で共演するようになった。この2人が出演すると、登場人物たちの間に、幕が開く前に流れていたであろう何年、何十年もの「時間」が、舞台の上に生まれる。この感覚は、玉三郎・仁左衛門の時にしか生まれない。

「名月八幡祭」でも、玉三郎演じる芸者と、仁左衛門演じる愛人との間にある「時間」が舞台上にあるから、2人が別れられないことも、2人の間に松緑演じる主人公が割り込めないことも、見る者は、理屈ではなく、感覚で理解できる。

 この3人のこの演目での顔合わせは、多分もうないだろうから、必見だ。

(作家・中川右介)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    冷静になれば危うさばかり…高市バブルの化けの皮がもう剥がれてきた

  2. 2

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 3

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  4. 4

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  5. 5

    維新・藤田共同代表に自民党から「辞任圧力」…還流疑惑対応に加え“名刺さらし”で複雑化

  1. 6

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 7

    小野田紀美経済安保相の地元を週刊新潮が嗅ぎ回ったのは至極当然のこと

  3. 8

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 9

    「しんぶん赤旗」と橋下徹氏がタッグを組んだ“維新叩き”に自民党が喜ぶ構図

  5. 10

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み