手当たり次第に殺すのではなく安心して暮らせる場所を残す 「羆追人たち」黒田未来雄著
「羆追人たち」黒田未来雄著
近年、市街地でもその姿を目撃されるようになったヒグマ。「駆除」か「愛護」かと意見が分かれがちだが、本書はハンターや研究者、アイヌ民族ら、それぞれの立場からヒグマの真の姿を見つめた「羆追人」らの記録である。
60歳のとき、北海道東部の国有林に狩猟に出掛け、ヒグマに襲われたハンターの原田は一命を取り留めたものの、左目の視力を失った。原田を襲ったのは、前日に別のハンターによって重傷を負わされた160キロのメス。とどめを刺さなかった、ずさんな狩猟のとばっちりであった。ヒグマの脅威を骨身に染みて理解する原田だが、手当たり次第に殺すことは間違っているという。山奥にヒグマがいるのは問題はなく、むしろヒグマが安心して暮らせる場所を残すことが人間の責務だと考える。
アイヌのヒグマ観から得た「ヒグマの個性を見極めて柔軟な対応」の大切さを説く、ヒグマの冬眠の研究を10年継続した女性飼育員、「ヒグマに人間や人里との距離感を持たせること」というヒグマ対策の専門家など、彼らは異口同音に単純に個体を減らすことに警鐘を鳴らす。ある研究者の「耳に心地よいスローガンは口先ばかりで、実際は経済重視の無秩序な開発が行われた。クマに落ち度があるとは思われない」という言葉を、我々はしっかり受け止めるべきだろう。 (山と溪谷社 2200円)



















