著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』旧ソ連や黒人解放がインスピレーションを与えた時代

公開日: 更新日:

『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』(1968年11月22日発売)③

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■『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』

『ホワイト・アルバム』の冒頭を飾る曲。「U.S.S.R.」とは当時のソビエト連邦のこと。

「元ネタ」はチャック・ベリーの『バック・イン・ザ・U.S.A.』という曲なのだが、ビートルズがパロディーにしたせいで、パロディーの方が有名になってしまった。

 まるでザ・ぼんち『恋のぼんちシート』(81年)と元ネタ=ジューシィ・フルーツ『恋はベンチシート』(80年)の関係である。

 歌詞の内容も、何ということのないパロディーソングだ。

↓………ここから続き………

 時代を感じさせるのは、今やロシアと戦争状態にある「ウクライナ」(当時ソ連)が歌詞に出てくること。また『我が心のジョージア』という、アメリカのスタンダードナンバーの曲名が突然出てくるが、この「ジョージア」もアメリカ南部の州ではなく、当時ソ連で現在独立した国名(旧「グルジア」)のことだろう。


 ポールの曲で、ボーカルもリードギターもベースも、さらにはドラムスもポールによるもの。

 何でも『ホワイト・アルバム』レコーディング中に、ポールとリンゴの間でいさかいがあって、リンゴが突然、蒸発してしまったからなのだ。

 ポールのドラムスは十分に聴ける、のだが、リンゴ特有のスイング感のようなものに欠ける。この違いは結構大きいと考える。

 なおソ連崩壊後の2003年、ポールはモスクワの赤の広場で開催されたライブでこの曲を演奏。「バック・イン・ロシア」したのである。

■『ブラックバード』

 こちらもポール作。というか録音にはポールしか参加していない。あっ、小鳥のかわいいさえずりも参加しているか。

 さりげない曲だが、アコースティックギターの伴奏が実に優美。というかこのギター、歌メロがなくても音楽として十分成立するぐらい美しい──とまで言い張るのは、この独特なギタープレーを何度もコピーして、その優美さに何度も浸ったから。

 さて、歌詞に出てくる「ブラックバード」は黒人女性を表しており、つまりポールの差別撤廃、「自由になろう」という解放への思いが込められている。


 録音は、キング牧師が暗殺された約2カ月後。そんな時代だった。

 黒人問題を美しいギター伴奏に乗せて歌う歌。ブラック・イズ・ビューティフル、ブラックバード・オン・ビューティフル・ギターである。

 余談だが、私のレギュラー出演するラジオ番組(BAYFM「9の音粋」)にゲストに来た吉井理人(現・楽天監督)が、この曲のギターをさらっと弾いた。驚いた。

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