2月歌舞伎座 中村屋の芸、「18代目勘三郎」のDNAここにあり

公開日: 更新日:

■玉三郎の「阿古屋」は見逃すなかれ

 夜の部は、18代目勘三郎と数々の名演が記憶にある坂東玉三郎の『阿古屋』。この役を若い女形に伝授していたので、玉三郎自身が演じることはないのではと思われていたが、まさかの上演。

 玉三郎の阿古屋には、「お見逃しなく」としか言うことはない。今回、見どころがあるのは重忠の菊之助と岩永の種之助。菊之助は舞台中央に座るが、ほとんど動かない役で、観客の視線は常に玉三郎に向かっているので損な役。ところがその間も、菊之助はまったくスキを見せない。玉三郎の演奏が終わったあと、とくに照明が強くなるわけではないのに、菊之助は輝き、オーラを放つ。裁くセリフは明朗で説得力があり、感服する。

 菊之助は行政官にして裁判官でもある重忠を演じたあと、一転して『江島生島』で、島流しになった役者・生島になり、その情熱と狂気を描く。七之助の江島との息も合う。

 最後は勘三郎の当たり役だった『文七元結』。勘九郎と七之助での上演は初めてだが、初役とは思えない。勘太郎が娘のお久をけなげに演じている。もう「子役」ではない。

 18代目勘三郎の若くしての死は痛恨事だったが、その大きな穴は、着実に埋められている。

(作家・中川右介)

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    本命は今田美桜、小芝風花、芳根京子でも「ウラ本命」「大穴」は…“清純派女優”戦線の意外な未来予想図

  1. 6

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  2. 7

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  3. 8

    石破首相続投の“切り札”か…自民森山幹事長の後任に「小泉進次郎」説が急浮上

  4. 9

    今田美桜「あんぱん」44歳遅咲き俳優の“執事系秘書”にキュン続出! “にゃーにゃーイケオジ”退場にはロスの声も…

  5. 10

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃