2月歌舞伎座 中村屋の芸、「18代目勘三郎」のDNAここにあり

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■玉三郎の「阿古屋」は見逃すなかれ

 夜の部は、18代目勘三郎と数々の名演が記憶にある坂東玉三郎の『阿古屋』。この役を若い女形に伝授していたので、玉三郎自身が演じることはないのではと思われていたが、まさかの上演。

 玉三郎の阿古屋には、「お見逃しなく」としか言うことはない。今回、見どころがあるのは重忠の菊之助と岩永の種之助。菊之助は舞台中央に座るが、ほとんど動かない役で、観客の視線は常に玉三郎に向かっているので損な役。ところがその間も、菊之助はまったくスキを見せない。玉三郎の演奏が終わったあと、とくに照明が強くなるわけではないのに、菊之助は輝き、オーラを放つ。裁くセリフは明朗で説得力があり、感服する。

 菊之助は行政官にして裁判官でもある重忠を演じたあと、一転して『江島生島』で、島流しになった役者・生島になり、その情熱と狂気を描く。七之助の江島との息も合う。

 最後は勘三郎の当たり役だった『文七元結』。勘九郎と七之助での上演は初めてだが、初役とは思えない。勘太郎が娘のお久をけなげに演じている。もう「子役」ではない。

 18代目勘三郎の若くしての死は痛恨事だったが、その大きな穴は、着実に埋められている。

(作家・中川右介)

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